人事労務情報

電通事件(安全配慮義務の重要性)   [2013.01.01]

12月26日の記事で、安全配慮義務に触れましたが、会社の「安全配慮義務」の重要性がクローズアップされた判例に「電通事件」があります。
本コラムでも何回か引用しておりますが、「安全配慮義務」を再確認して頂くために全容をまとめておきます。

電通事件:長時間労働の結果、うつ病にかかり自殺した事件の判例

1.事件の流れ
平成2年に大学を卒業した新入社長のA(男性・24歳)さんは、入社した年の7月くらいから慢性的な長時間労働に従事していました。
・申告残業=60~85時間/月 ・深夜労働時間=5~20時間/月 ・徹夜回数=7回/月程度

当初は意欲的で、上司の評価も良好でした。

平成3年1月以降、帰宅しない日があるようになり、その年の7月には元気がなく顔色も悪い状態となりました。
さらに、8月に入ると、「自信がない、眠れない」と上司に訴えるようになったほか、異常行動も見られ、遅くともこの頃までにうつ病に罹患しました。
そして、わずか入社1年5か月後の平成3年8月27日、自殺してしまったのです。

うつ病にかかり、自殺に至ったことから、遺族である両親が会社に対して損害賠償を請求した裁判です。

2.裁判の流れ
最高裁の裁判における争点は、次の3点でした。
 (1)業務と自殺との間に因果関係が認められるか
 (2)会社に義務(注意義務ないし安全配慮義務)違反があったか
 (3)本人の性格などを損害賠償算定の際に減額事由として考慮すべきか

最高裁判断
(1)長時間労働によるうつ病の発症の結果としての自殺という、一連の連鎖が認められ、因果関係あり。
   それまでの裁判例では、自殺という行為は、本人の判断能力が認められる場合、
   業務との間の因果関係を認めることに慎重でしたが、この判例以降、上記のような
   連鎖が認められる限り、本人の判断能力は問題とされませんでした。
   したがって、本判決は、従業員の過労自殺に関わる民事上の損害賠償請求について、
   因果関係を認めた初めての最高裁判決として重要な意味をもっています。

(2)「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際して、兼務の遂行
   に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないように注意
   する義務を負うものであり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する
   者は、使用者の注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。」とした。
   
   そして、上司らは、本人が恒常的に著しい長時間労働に従事していること及びその健康状態が
   悪化していることを認識しながら、その負担を軽減するような措置を取らなかったとして、会社の
   注意
義務違反(安全配慮義務違反)を認めました

(3)「労働者の性格が個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格を
  賠償額の算定に斟酌すべきではない。」としました。

結論としては、二審の損害額の算定(減額)についての判断を破棄、差戻しとされましたが、その後の差戻審において、最終的には、会社が約1億6、800万円を支払うとの内容で和解が成立しています。

3.判例の意味
次のことを考えさせられます。

①直属上司の役割の再認識
上司の大切な役目は、直接に指揮命令する部下の仕事に対してきっちりと責任を負うことである。

ここで責任を負うべきものは、仕事の結果、勤務体制と勤務状況などです。

②会社の働かせ方、仕組みの重要さ
もちろん、過労のために自殺する社員は少ない。よって、自殺するのは本人が精神的に弱いからとか、仕事のやり方が下手だからと言う人がいますが、本当にそうでしようか?

この「電通事件」では、自殺の原因は、長時間労働という量的な過重さもあるし、それだけでなく、慣れない仕事・きついノルマなど労務の質的な過重さが原因になっています。

過労は、本人の問題と言うよりは、
会社の働かせ方、言いかえれば「仕組み」が「安全配慮義務」の面で問題である可能性も十分あります。

この「仕組み」問題、「安全配慮義務」問題に関して争われたものが「電通事件」と考えられます。

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