人事労務情報

退職社員に資格取得費用の返還請求はできるか   [2013.03.22]

はじめに
資格や技能を取得させるため会社で費用を負担したのに、取得後その社員がすぐに退職してしまうと、会社は社員教育に投資をした意味がありません。
このような場合、資格取得費用を返還させることはできるのでしょうか。

関連する法律
社員に対する資格取得費用などの返還については、労働基準法で以下のように定められています。

【第16条】使用者は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

          ※違約金:約束を破った(契約不履行の)場合、実害の有無に関わらず支払わなければならない金銭
          ※損害賠償額の予定:債務不履行の場合に実害額に関わらず一定額で支払う予定

民法では契約違反に対する損害賠償額の予定を認めていますが、当事者間に交渉力の格差がある労働関係では、労働者の足留めや強制労働に繋がるなど弊害が大きいため、民法の特例としてこのように規定されています。

会社は研修などの費用を無駄にしたくないため、資格取得後一定年数の勤続を義務づけ、違反者には費用返還を求めたいところでしょう。
しかし、そのルールがあると、社員から「退職の邪魔をしている」と思われるかもしれません。

なお、資格取得費用の返還請求が労働基準法第16条に違反するかどうかは、主に以下2点を基準に判断されます。

1. 研修費用を「支給した」のか、「貸した」のか
2. 条件が「不当な拘束」となるか

【1. 研修費用を「支給した」のか、「貸した」のか】
会社が資格取得などの費用を支給した場合、資格取得後に継続勤務をしない際に返還を求める行為は「違約金を定めること」とみなされ、労働基準法第16条に抵触します。

一方、会社が費用を貸した場合は、「一定期間の勤務や状況により費用の返済を免除する」という特約付きの金銭消費貸借契約を締結して会社が費用を立て替えるものであるため、原則として同条の違反とはなりません

資格取得費用貸付制度としては、例えば下記のように段階的に免除割合を設定し、資格取得後1年~3年程度の勤務をもって全額を免除する仕組みを設けることができます。

<貸付費用免除の段階例>

資格取得後の継続勤務期間

免除の割合

満1年以下

0%

満1年超2年以下

1/3

満2年超3年以下

50%
満3年超 100%

 【2. 条件が「不当な拘束」となるか】
ただし、前述の貸付制度自体に無理がある場合は、同条違反となる恐れがあります。
例えば、
①免除に必要な就労期間が長すぎる場合
②返還請求金額が合理的な実費を超えている場合
③貸付申込が労働者の自由意思ではない場合
などは、労働者を不当に拘束している可能性があります。

また、業務に必要な基礎的技能を付与する場合、教育費用は会社が負担するべきものとなり、労働者に研修費用を払わせる条件自体に合理性が認められないこともあります。

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