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定年制と解雇制限 [ 2012.09.30 ]
ここでは、「定年」の制度について少し補足します。
「定年」と言われる制度には、2つの場合があります。
1)規定上および実際の取扱いにおいて、自動退職の事由となっている場合
2)規定上および実際の取扱いにおいて、解雇の事由となっている場合
この二つは、通常は問題にならないのですが、解雇制限が絡む場合に、この区別が重要となります。
例えば、定年の年齢に達した時点で業務上の傷病により療養のために休業している場合、通常の場合は、ご存知のように労基法での解雇制限の対象となり、療養のために休業している期間とその後の30日間について解雇が禁止されます。
しかし、定年による退職が解雇に該当しない自動退職の場合は、こうした解雇制限の規制の適用を受けません。
ここで、注意が必要なのは、定年が自動退職自由を定めたものか、解雇事由として定められたものであるかは規定の表現のみでなく実際の運用の実態から判断されることです。
もっと言えば、一切の例外なく、定年に達したものが自動的に解雇になっていれば、解雇制限の適用はありません。
しかし、一方、定年制に但し書として,業務上必要と認めた場合は引き続き雇用することがあるといった例外規定がある場合や、過去の実際の運用においてこうした取扱いが少なからずなされている場合は、労働者が定年後も引き続き雇用されることを期待するのも理由があるということにもなります。
このような場合、契約を終了させるためには改めて解雇の意思表示が必要である場合もあると考えられます。
したがって、そのような場合は、定年解雇制と同様、解雇に関する規制の適用を受けます。
よって、上記の例では、業務上の傷病による療養のための休業期間中およびその後30日間は,療養開始後3年を経過し,労災保険による傷病補償年金を受けることとなった場合等でなければ解雇(この場合は定年到達を理由とした退職取扱い)はできないということになります。
問題社員の解雇について(2) [ 2012.09.28 ]
問題社員の解雇、特に能力不足の社員を解雇する場合には、問題点の改善のための教育・研修をしているかどうかが重要になります。
また、問題社員の「問題」を客観的に証明できるかも重要です。
以下、問題社員の解雇事案の際に裁判所が重視する点について説明します。
<問題の程度>
【1.勤務態度不良の程度】
お客様からのクレーム事実が、「日付」「状況」「クレーム内容」など詳細に記録されているでしょうか。
たとえばクレームがあった場合には、「クレーム報告書」などの所内書式に基づいて本人から報告をさせることでそのクレーム事実を証明しやすくなります。
【2.問題発生の回数】
何回も同様の種類のトラブルを繰り返していることは解雇しやすい方向の要素になります。
「何回も指導したのだけど改まらなかった」という状態であることです。
【3.問題点、問題行動について会社の指導があったのか】
解雇する前に十分な注意、指導、教育を行っているかが大事です。
長期間複数回にわたってきっちりとした注意指導をするほど解雇しやすい方向になります。
指導の事実は「指導書」などの書面化するほか、口頭や電話、メールなどでの指導も「〇月〇日に〇〇という事案について△△という方法でこのように指導し、改善の意思を確認した」などの記録しておくべきでしょう。
【4.改善指導について、本人の態度はどうだったか】
改善指導、いわゆるイエローカードに対して本人がどのようにリアクションしたかも重要です。
【5.他の社員との公平性はあるか】
同じような問題行動・ミスをした他の社員はどんな処分を受けていたかも重要です。
そこに不公平がある場合は解雇しにくくなります。
以上のことから、「教育指導をしつつ、その指導事実を記録しておくこと」が、解雇の有効性を考える上で重要になるでしょう。
問題社員の解雇について(1) [ 2012.09.27 ]
問題社員の解雇については、ご存知のようにかなり高いハードルがあると言えます。
日本では、終身雇用制度を前提とした労働理論が発展しており、社員を一人前に育てて、その能力を高めるのは採用した会社の責任であるという考え方がベースになっています。
つまり、問題社員(特にその能力不足による)の解雇については、「会社側がその問題点を注意・指導する段階があるかないか」が重要になってきます。
以下、問題社員の解雇事案について裁判所で重視される要素を示します。
【1.解雇する前に、配置転換や職種の変更などで様子をみたか?】
他の上司のもとで異なる職務をさせると、能力を発揮しだすこともある。そのチャンスを与えているのかを見られます。
環境か仕事内容を変えてみたか、ということです。
【2.会社側に落ち度はないか?】
問題社員の問題について、会社の制度や体制に落ち度がないかを見られます。
会社にも原因がある場合、一方的な解雇は不公平とされる可能性があります。
例)教育や研修が不十分である、上司の指示が不明確・不適切である
【3.即戦力として中途採用された者か、新卒か?】
新卒であれば、とくに会社の教育責任の度合いは強いでしょう。
単に期待された能力がないことだけで解雇をすることは難しくなります。
一方、即戦力として中途採用された者について、その採用面接で「即戦力として求めている能力」をはっきりとさせ、かつ、それが一定の常識的な条件下で出来ないときには解雇等もあり得ると伝えている場合は、解雇の有効性が高くなるでしょう。
【4.勤続年数はどのくらいか?】
勤続年数が長ければ、基本的な能力には問題がないはずだという推定が働きます。
つまり、「基本的な能力が足りないならばもっと早い段階で処分や再教育があったはず」という考えが出てきます。
これらを考えると、経営者は雇入れの段階から「教育コストはかかるもの」という認識でいたほうがよさそうです。
以上、問題社員の解雇について①でした。
パワハラを起こさないために [ 2012.09.24 ]
「パワハラ」を起こさないための一般的な流れは、次のようです。
ただし、4項、5項は、パワハラが発生した場合です。
1.社内規定・社内体制の整備
↓
2.社員教育
↓
3.相談窓口の設置・運用
↓
4.社内調査
↓
5.被害者の職場復帰
以下、その概要を順に述べます。
1.社内規定・社内体制の整備
現在のところ「パワハラ」に特化した厚生労働省の指針はありません。
そこで、既にある 「セクハラ」に関する指針を参考とする場合が多いようです。
その指針とは、
「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置に
ついての指針」
になります。
これをパワハラに応用して社内規定を作る、または、セクハラと合わせて「ハラスメント防止規定」
として作る場合が多いようです。
この防止規定では、次のことを含ませます。
1)トップのメッセージ
・組織のトップが職場においてはパワハラがあってはならないことを明確に示す。
・強調すべきは、社会的要請により仕方なく実施するものではなく、この取組みは、安心して働ける
職場を目指す打ち手の重要な一つであり、会社は積極的に行うということです。
・狙いは、生産性の低下や人材の流出といった損失を防ぐばかりでなく、社員の仕事に対する意欲を
向上させ、職場の活力を更に向上させることにある。
・つまり、パワハラの十分な理解⇒職場の仲間が、職位としての上下に配慮し、人として対等にコミュ
ニーケーション⇒人間関係改善・情報共有・自由な発想⇒生産性向上・活力アップ
2)相談窓口の設置と運用方法
3)万一、発生した場合の迅速な調査の方法
4)パワハラの加害者に対する厳正な対処の内容を規定
5)相談の秘密保持
なお、細かなことですが、懲戒については就業規則に明記されていることで行えますので、防止規定を別途規定する場合には就業規則の本則に委任規定を定め、防止規定が就業規則の一部であると明示することが必要です。
また、作成された防止規定は、社員に周知することが必要です。
2.社員教育
社内規程が効果をあげるためには、社員がパワハラに対して、正しい理解を持つことが必須です。
そこで、パワハラに関する社内研修を実施します。
パワハラには、「する側」と「される側」がいますので、管理職向けの研修と、一般の社員向けの
研修とは分けて実施した方が効果的です。
管理職である社員は、職権があり、パワハラを「する側」に陥りやすく、またその内容も、より重大な
ものとなりやすいです。
一般の社員は「される側」に陥りやすいため、「される側」を想定して、パワハラについての意識を
高める必要があります。
一般社員への研修は、パワハラでもないのに騒ぎ立てないようにする狙いもありますが、管理職の側
に緊張感を持たせる効果があります。
部下たちは、どんなことがパワハラに該当するかについて知識をもっているのだ、ということを管理職が
自覚することで、パワハラを思いとどまらせる効果があります。
3.相談窓口の設置・運用
パワハラは、上司が加害者である場合が多く、通常の業務ラインだけで問題を解決しない方が良いと
考えられます。
⇒通常ラインとは別に相談窓口を設置します。
相談窓口は、内部に設置する場合、外部に設置する場合、内部・外部の両方に設置する場合が
あります。
また、相談窓口を設けた際には、社員に周知し、利用しやすい体制にします。(電話、メール、匿名可
とします。)
・相談窓口により、ハラスメントが起きてしまった場合でも社内で解決できることが多くなり、いきなり
当局に駆け込まれるといったことも少なくなります。
4.社内調査
この調査で気と付けるべきは①秘密の保持、②公平性、③プライバシーへの配慮です。
パワハラとなる限界 [ 2012.09.23 ]
昨日、『パワハラ防止の「むずかしさ」』の記事を書きました。
この記事の中では パワハラ防止のむずかしさ とは、「①業務上の指示や叱責は必要であり、セクハラのように本来の業務では不必要なものではない。よって、誰もが加害者となり得ること。②しかしながら、ある限界を超えるとパワハラとなるが、その限界を個々の 管理者に十分に理解させる必要があること。」にあると書きました。
今日は、②のパワハラとなる限界についてお話しします。
1.パワハラの定義
パワハラの定義には、公認されたものがなく、いくつかの団体等で出されています。
ここでは、「パワハラ(パワーハラスメント)」という言葉を造られた方(岡田康子先生)が所属されている会社(クオレ・シー・キューブ)の定義を記します。
【定義】
職務上の地位又は職場内の優位性を背景にして、本来の業務の適正な範囲を超えて、継続的に相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、就労者に身体的・精神的苦痛を与え、また就業環境を悪化させる行為
2.定義の詳細
ここでは、上記の定義を具体的に解釈します。
(岡田、稲尾『パワーハラスメント』日経文庫を参考に作成しました。)
1)職務上の地位又は職場内の優位性を背景にして
・通常、考えられているように管理職の職権が、まず、第一ですので管理職が最も加害者になり得ます。
・管理職のみでなく、次のような人、グループもパワハラの加害者と見られます。
①専門的な知識や技能がある人
情報などを出し惜しみすることでパワハラとなり得ます。
(例えれば、忠臣蔵の吉良上野介でしょうか。)
②内々のグループをつくり、集団の力でパワハラをします。
(パート仲間がなじめない新入りに対して行うものです。また、集団で新任の上司に対しても行うことが、
あり、上司から部下とは限らないのです。)
2)本来の業務の適正な範囲を超えて
・この「適正な範囲」には、「客観的に見て」、「業務上の必要性」が重要なポイントです。
次の指示は、必要性が認められません。
①嫌がらせ目的のトイレ掃除
②教育と称する毎日の反省文書き
③その従業員が従来やったこともない毎日の意味の無い単調な作業
④私的な送り迎え、買い物など
これに加えて、過大な仕事量、目標を与える。又は、全く仕事を与えない。
3)継続的に
・仕事上のミスに対して、本来は抑えるべきですが、我慢できずにその場で大きな声で叱責したが、
1回だけであればパワハラとは言えません。
・何回も継続して、行為を行うとパワハラと認められる可能性が大です。
・ただし、1回限りでも差別用語を使うなど明らかに人権を侵害した場合や殴る、蹴るなどの暴力
行為はパワハラです。 1回でもアウトです。
4)相手の人格や尊厳を侵害する言動を行う
・次のようなことです。
①本人がどうしようもないこと(家柄、生い立ち、性別、容姿、など)の非難や変えられないことの
指摘。 指摘自体が「指導や教育」でなくなり、むしろ人格を傷つける。
②仕事のミスを本人をバカにするようなニュアンスで伝える。
③本人が気にしていることを人前でおもしろ、おかしく話して笑いものにする。
④人前で大声を出して感情的、高圧的、かつ攻撃的に叱責。
⑤人としての存在の否定や無視(『お前は要らない。』、『辞めてくれ。』、『お前は本当にダメな赦。』、
『顔も見たくない。』)
5)就労者に身体的・精神的苦痛を与え、また就業環境を悪化させる行為
パワハラを受け続けると・・‥
・「胃が痛くなる」などの身体の不調だけでなく、「眠れない」、「職場にいくのが怖い」などの心身への
影響が深刻となる。
・最悪の結果は、精神障害⇒自殺です。
3.パワハラとなる限界
以上のことからパワハラとなる限界は、次のようなものと考えられます。
1)次のものは、言うまでも無く絶対にパワハラ(刑法などに抵触)
①暴力行為:殴る、蹴るなど
②脅迫行為:「言う事をきかないと〇〇だぞ。」
③侮辱行為:土下座の強制など
④会社法などの違法行為の強要:詐欺まがい商法、不正経理などの強要
2)客観的に見て業務に不必要な指示
①嫌がらせ目的のトイレ掃除
②教育と称する毎日の反省文書き
③その従業員が従来やったこともない毎日の意味の無い単調な作業
④私的な送り迎え、買い物など
3)過重な仕事量、目標を与える。又は、全く仕事を与えない。
4)パート、アルバイトなど雇用関係が不安定な人への「明日から来なくていい。」 などの発言
5)人格や尊厳を侵害する言動(前述2項の4)に記載のもの)
6)精神的に疲弊した社員への追い込む発言。「やる気があるのか?」
管理者が適正な範囲で叱責しているうちは良いが、 表現方法が間違っていたり、
(大声も含む) 余計な一言を付けると 大きな問題に発展する。
昨日の記事で書きましたように、部下がパワハラではないようなことも「パワハラだ!」、
「パワハラだ!」と騒ぎ出し、上記の限界をしっかり認識していない管理職の方は、それをたしなめる
こともなく、下手をすると「パワハラと言われる位なら何も言わないで おこう。」とし、職場の秩序が崩壊
してしまいます。
逆に、管理職のみならず社員もパワハラの限界を理解し、互いにコミュニケーションすれば、
職位の上下はあるが、人間として対等に、本音が言えるようになり、人間関係改善、情報の
共有化の進展、発想力向上が期待できる働きやすい職場になり得ます。
管理職の方の教育等が必要です。
もちろん、管理職の方の教育だけでは、不十分で、会社全体で取り組み、厳しくなるから仕方なしに
対応するのではなく、これを機会に働きやすい職場にすべき努力することが大切だと思います。
パワハラ防止の「むずかしさ」 [ 2012.09.22 ]
昨日のパワハラ ポータルサイト開設の記事に関連して、パワハラ防止の「むずかしさ」について、
私の個人的な思いを書きます。
1.「パワハラ」、「セクハラ」、「いじめ 」
この3つのものが、職場で、精神的なダメージを社員に与える 代表的なものです。
2.「パワハラ」 と 「セクハラ」、「いじめ 」の違い
この内、「セクハラ」と「いじめ」に関しては、 職場での業務には本来的に入り込まないものです。
言い換えれば、通常は本来の業務をする上で 生じる可能性または危険性がないものです。
業務を進める上で、 「セクハラ」と誤解されるような行動、 子供のような「いじめ」の行動、
これらは全く必要がなく、通常の社員であれば、無縁のものです。
(但し、酒が入ったときのように非通常時には十分な注意が必要です。)
一方、「パワハラ」に関しては、その定義の一例は、
「職務上の地位または職場内の優位性を背景にして、 本来の業務の適正な範囲を超えて、
継続的に 相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、
就労者に身体的・精神的苦痛を与え、また就業環境を悪化させる行為」
ですので、
本来の業務で、必要な業務指示や指導を上司が行う際には、 適正な範囲を守らないと「パワハラ」と言われかねないのです。
3.パワハラ防止のむずかしさ
「セクハラ」や「いじめ」のように業務をする上で通常ならば避けて通れるもので無く、
業務をする上で必要な指示などがある限界を超えると「パワハラ」と言われることが
パワハラのむずかしさと考えます。
このため、上述の限界(あるいは境目)を業務上の指示、指導を行う管理職の方が十分に理解
していないと「これは、パワハラではないですか?」と部下が言い、パワハラではないことでも
「パワハラだ!」、「パワハラだ!」と訴える、いわゆるパワハラの悪用という弊害を阻止できないのです。
また、理解が不十分な管理職の中には、「パワハラとうるさく言われる位なら何も言わないでおこう。」
とされる方がいると職場の秩序が守れないばかりでなく、部下が育たず、会社の将来が危うくなります。
パワハラとなる限界点に関しては、後日、記載致します。
退職願い・退職届の取消しについて [ 2012.09.20 ]
時として起こることがありますが、従業員の都合で退職を申し出た者が、途中で、その申出を取り消したい と言ってくることがあります。
退職を申し出た際には、慰留に努めたにもかかわらず、退職の意思が固く、承認して後任の都合をようやくつけた時点での取消しは、本当に困ったものです。
労務関係では、安易に認めてしまうと先例となり、後々、困りますので、認めたくなるのは十分理解できます。
このような場合には、退職の申し出がどのようなものなのかを確認することが、第一歩です。
退職の申し出については、「退職願い」という言葉が普通に用いられますが、次の2つの場合に分けることができます。
1)労働契約の相手である使用者の承認・合意を前提としている合意解約の申し入れである場合
2)このような承認・合意を前提としない一方的な解約の告知である場合
1)を「退職願い」とし、2)を「退職届」として、区別される場合があります。
厳密には、このような違いによって撤回の条件も異なると言えるのですが、裁判例では、合意解約の申し入れであるとの前提で判断されることが多いと言われています。
このことから、合意解約の申し入れに対する承諾の意思表示がなされるまでの間においては、退職願の撤回も許される のです。
問題となるのは、どのレベルでの承諾で、企業側の承諾の意思表示と考えられるかですが、これに関しては、これまでの判例で次のように考えられています。
「企業内の職務権限規定の上で定められた決裁者(勤労部長、勤労担当役員など)の承諾の意思表示があれば、企業としての承諾の意思表示があった。」
このような場合、上述のような退職願いの撤回に応じる法的な根拠はないのです。
営業秘密情報の保持と競合避止の関係 [ 2012.09.18 ]
はじめに
退職者が顧客情報や会社のノウハウを使って競合の会社に就職する、また独立することは、会社にダメージを与えかねません。ここでは、営業秘密情報の特定と競業避止規定に関するポイントを説明します。
営業秘密情報
営業秘密情報とは、主に「不正競争防止法」で定められた以下の3点をすべて満たしている情報のことを言います。
【1.秘密管理性】
*秘密として管理されている
(情報に対してアクセス制限をしている、且つ情報にアクセスした者がそれが秘密であると認識できる)
【2.有用性】
*有用な情報である
*事業活動に使用されることで、経費削減や経営効率の改善などに役立つ
例)顧客データ、仕入れ先リスト、設計図、実験データ等
【3.非公知性】
*公然と知られていない
*情報保有者の管理下以外では一般に入手できない
会社が保有している情報の中に会社が秘密としたい情報(企業秘密情報)があり、さらにその中に上記3要素を満たす「営業秘密情報」があるという構図があります。
企業秘密情報管理規程の重要性
会社から漏えいすると困る顧客情報や独自のノウハウなどを適切に管理するためには、さらに以下3点が必要です。
【1.情報の定義づけをする】
「企業秘密情報・営業秘密情報とは何か」を特定する。
【2.企業秘密情報管理規程の作成】
以下の目的のため、企業秘密情報管理規程を作成する。
① 特定した秘密情報を従業員に周知する。
② 秘密情報を不正に使用するとどのようなペナルティーが与えられるかを知らしめ、情報漏えいを抑止する。
【3.誓約書の作成】
企業秘密情報規程とリンクする形で、一人ひとりの従業員から「情報漏えいをしない、情報の不正使用をしない」旨の誓約書を提出させる。
競業避止規程について
競業避止(きょうぎょうひし)とは、退職後に競合する企業に就職する、または事業を開始することを禁止することを言います。ところが、憲法で「職業選択の自由」が謳われているため、退職後の行動を制限することは簡単ではありません。
実際には、①会社の役員であり特に会社の機密を握っていた場合②特別な開発を任されていて、それに見合う報酬を得ていた場合などの特別な状態でなければ、競業避止義務を退職者に負わせることは難しいでしょう。
競業行為には、営業秘密情報の使用が伴うと想定されます。そのため、競業避止規程の中に「営業秘密情報の不正な使用の制限、並びに使用の際の損害賠償規程」も盛り込んでおくと、競業行為を防ぐために効果的でしょう。
新規学卒者の労働条件の明示について [ 2012.09.18 ]
労働契約の締結時に労働者に対して賃金,労働時間、その他の労働条件を明示しなければならなりません。(労働基準法第15条)
この明示すべき項目には、就業場所や従事すべき業務に関する事項も含まれています。
これらの事項は、新規学卒者に対しては、内定時においては確定的に決め難いものです。
内定時から入社までの期間において、企業を取り巻く環境が変化することが十分に考えられるためで
す。
また、入社直後の教育期間で、本人の能力が内定時の期待値に比べて、いい意味でも、悪い意味でも違う場合がありますので、その時点で正式配属とする場合もあると思います。
一方で、これまでの内定取消しをめぐる裁判例では、内定の通知により労働契約の成立が認められるケースが多くあります。
とは言っても、新規学卒者は、内定があったからといってもすぐに就労するわけではありませので、上述のように決め難い面があるのも事実です。
行政解釈では、この点を考慮して、「雇入れ直後の就業場所及び従事すべき業務を明示すれば足りるものであるが、将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えない。」としています。
企業は募集採用に際しては、当然人員計画を基にし、それに沿った人材を内定しているはずですから、近い将来に想定される配属部門等を明示するように努めるなど,法の趣旨に即した工夫をすべきと考えます。
更に、配慮するのであれば、変更の可能性があることを明示すれば良いのです。
例えば近い将来改正が見込まれるとしても、内定時点の条件は現実に特定されているわけですから将来改正の可能性があることを注記した上で〇年△月時点ではと限定した明示もできるでしょう。
いわゆる内々定の時点では,いまだ労働契約の成立とは認められないというのが通例であり、この時点では労基法による労働条件明示の義務はかからないと考えられています。
期間雇用者の雇止めに関する紛争防止について [ 2012.09.17 ]
期間雇用者の雇止めを巡る紛争防止の観点から使用者が講ずべき措置が「有期労働契約基準*」として、平成16年1月1日から施行されています。これは、厚生労働省告示として定められたものであり、強制力はありませんが、行政指導が行えるものです。*正確には、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」です。
この基準の主な内容は、次の通りです。
1)契約締結時の明示事項等
有期労働契約の締結に際して、使用者は労働者に対して、期間満了後の当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。(義務規定)
なお、更新する場合があると明示したときは、更新する場合としない場合の判断基準を明示しなければなりません。(義務規定)
上記を変更する場合には速やかに内容を明示する。
2)雇止めの予告
使用者は、契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者(契約を更新しないことが明示された者を除く)を更新しない こととしようとする場合には、期間満了前の30日前までに、その予告をしなければならない。(義務規定)
3)雇止めの理由の明示
上記の2)の場合、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。(義務規定)
4)契約期間についての配慮
使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者の有期契約を更新しよう とする場合には、契約の実態や労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければならない。(努力義務規定)
なお、1)での明示事項については、行政解釈は次のような例を示しています。
ⅰ) 「更新の有無」 :
①自動的に更新する。 ②更新する場合があり得る。 ③契約の更新はしない。
ⅱ) 「判断の基準」 :
①契約期間満了時の業務量により判断する。
②労働者の勤務成績、態度により判断する。
③労働者の能力により判断する。
④会社の経営状況により判断する。
⑤従事している業務の進捗状況により判断する。
ⅲ) 「更新しない理由」 :
①前回の契約更新時に本契約を更新しないことが合意されていた。
②契約当初から定めていた契約回数の上限に達したため。
③担当していた業務が終了/中止したため。
④事業が縮小のため。
⑤業務遂行能力が十分ではないと認められる。
⑥勤務不良のため(職務命令に対する違反行為を行った、無断欠勤した・・・等)
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