人事労務情報

個人情報保護法と就業規則   [ 2012.11.29 ]

会社が健康診断結果を知るには労働者の同意が必要か?

   労働安全衛生法66条により会社が行う健康診断を受託した医療機関が、その結果である労働者の個人データを委託元の会社に提供することについても、第三者提供に該当するとされています。

それでは、

「会社は健康診断の結果の通知を受けるのに、本人の同意が必要なのでしょうか?」

【結論1】法定項目の診断結果は、そもそも会社帰属情報であり、個人情報漏洩ではありません。
  
「医療・介護関係業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」では、会社が行う健康診断を受託した医療機関が、その診断結果を会社に提供することも、第三者への提供に該当すると解しています。
   そうであっても、社員の診断結果を会社へ通知することは、「本人の同意が得られているもと考えられる」と説明しており、同意を要しない取扱いとしています。
   つまり、労働安全衛生法により、経営者に社員の定期健康診断を義務付けるという法的意義から考えて、診断結果はそもそ会社帰属の情報であり、第三者への個人情報提供という問題は生じないとしていま
す。

【結論2】 ただし、法定以外の検診項目の結果については、本人の同意が必要です!
  
会社によつては、法令に定める検診項目以外の項目についても受診し、社鼻の健康保持増進こ努めている場合もあります。
   たとえば、希望者や特定の社員に対し、生活習慣病や婦人科の検診などを実施しているような場合です。
   こうした特別検診は義務つけられているものではないため、その診断結果を会社に通知する場合については本人の同意が必要です。
   そのため、実務的には会社への診断結果の通知に同意することを条件として受診して貰うこととしましよう。

【結論3】再検査や臨時の健康診断の結果通知についても、本人の同意が必要です!
  
定期健康診断などによって異常が見つかった場合に、再検査を受けさせることについては、会社こ対する法的な義務はありません。
   つまり、言い換えれば検査などについての診断結果を会社に通知して貰うためには、社員の同意を得て、医療機関から会社に通知して貰うか、社員自身に報告を求めるしかありません。
   もし、社員が必要な報告をしなかった場合は、会社としては健康状態を配慮した取扱いをすることができまかったとしても、安全配慮義務違反を問われることもあり、会社として労務の提供の受領を拒否することも考えられます

こうすれば安心、入社時の誓約書
    入社時において、「定期健康診断後の再検査、その他、会社の指示による健康診断の結果については、医療機関からの通知をすることに同意し、また、必要に応じ報告します」という内容をもりこみ、包括的に同意を取っておく方法などが実務的には考えられます。

賃金の支払い形態について   [ 2012.11.27 ]

   賃金の支払い方には様々な種類があります。どのような種類があるのでしょうか。

 【賃金支払い形態の種類】
   賃金の支払い形態は、月給制・日給月額制・日給制・時間給制などのように分類されます。

① 月給制(完全月給制)
   基本給の額が月額で決定され、欠勤などがあっても減額されることなくその月額で支払われます。

② 日給月給制
   基本給の額は月額で決定されますが、欠勤や遅刻・早退があると、その日数や時間数分が差し引かれます。
   日給月給制のことを単に月給制と呼ぶことも多く、誤解の元となりがちです。
   日本では、正社員給与の多くがこの「日給月給制」でしょう。

③ 日給制
   基本給の額が「1日いくら」という日額で決定されます。
   その他の手当は月額単位という場合もあり、1ヶ月分をまとめて支給します。

④ 時給制
   1時間を単位として賃金額が決定され、1ヶ月間の勤務時間数に応じて計算します。

⑤ 出来高払い制(歩合制)
   労働の結果として出来高により決定されます。
   ただし、労働基準法27条に、「出来高払い制その他の請負制(いわゆる歩合給制)で使用する労働者についても使用者は労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」と定められています。
   一定額の保障とは平均賃金の6割程度とされています。

⑥ 年俸制
   個人の年間の賃金総額が、1年を単位として決定されます。
   しかし年俸制であっても賃金支払いの原則から、「12分の1ずつ毎月支給、または16分の1を毎月支給し、残りを賞与時期に支給する」などとします。

 【賃金の控除について】
   賃金は全額支払うことが原則ですが、所得税や住民税・健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の本人負担分は給与から天引きして支払うことが法令で認められています。
   また、労使協定を結べば、団体保険の保険料や親睦会費、旅行積立などを控除することもできます。

   以上、賃金の支払い形態についてでした。

平均賃金について   [ 2012.11.26 ]

   平均賃金とは、労働基準法で定められている手当や補償などを算定する時に基準となる金額です。

【平均賃金の計算が必要となる事由】

  1. 解雇予告手当(即解雇の時)
  2. 休業手当(使用者の責めによる休業時の補償給)
  3. 年次有給休暇の賃金
  4. 業務上の災害補償
  5. 減給制裁の制限

   平均賃金は労働者の生活を保障するためのものなので、通常の生活賃金を算定することが基本です。
   原則として、事由の発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額となります。

   賃金総額とは実際に支払われた賃金のすべてです。
   賃金総額を、通常支払われる[基本給+諸手当]だけであると誤解して計算している事業所も見かけられますが、残業手当や通勤手当、歩合給などもすべて含めて算出します。

【賃金総額について】
   次のものは、賃金総額に含まれません。

  1. 臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金 など)
  2. 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  3. 特別に法令や労働協約で定められていない現物給与

   以上、平均賃金についてでした。

会社都合で休業をする場合の補償について   [ 2012.11.25 ]

   不景気や業績悪化による会社都合の休業の場合、従業員の賃金を補償しなくてはなりません。
   そのための「休業手当」とはどのようなものでしょうか。

 

【休業手当とは】
   労働基準法では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、(会社の都合により従業員を臨時に休業させた場合)使用者は休業期間中、その労働者に、平均賃金の60%の手当を支払わなければならないとされています。

   労働契約にしたがった就労の意思がある労働者に対して、会社の都合で就労させずに賃金を支払わないことを安易に認めず、労働者の生活保障をはかるための規定です。

   民法によると、債権者の責めに帰すべき事由がある場合は、賃金の全額について請求することができるとされています。
   しかし、民法は任意規定ですので、当事者の合意、つまり就業規則や労働協約・労働契約があれば排除することができるのです。
   なお、労働基準法は強行法規ですので、当事者の合意があってもこれを下回ることはできません。

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<使用者の責めに帰すべき事由>

  • 工場の焼失
  • 機械の故障
  • 原材料不足
  • 資金難
  • 生産過剰による操業短縮
  • 監督官庁の勧告による操業停止 など

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<使用者の責めに帰さない事由>

  • 天災事変による不可抗力 など

   なお、この場合は使用者に休業手当の支払い義務はありません。
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   この休業手当は、労災による休業(労災保険による補償)、従業員の自己都合による欠勤とは別物として考えなくてはなりません。
   以上、休業手当についてでした。

能力不足社員への賞与の支給は要注意    [ 2012.11.24 ]

1.賞与の支給は、各社員の評価と直結
   仕事の業績、成果、結果やそれにつながる行動に対して、<良いものは誉める> <適切でないものは注意をする>
   良くても悪くても何も反応を示さないのは、適切な人材育成ではないと思います

☆何を評価するか☆基準は何か☆ルールや方法は?など、検討することはあると思いますが、個々の社員は、◆正しい評価を望んでいます。


2.評価は、仕事のアウトプット対して行うことが原則
   評価は「人」を評価するのではなく、「仕事」の評価です。
   私自身、かねてから抵抗がある「人事評価」の言葉、これは「人」を評価するのではなく、その人の「(仕)事」を評価することです。
   誤解を生まないように「人事評価」ではなく、「業績又は仕事評価」と言った方が適切と思います。
   もう少し厳密にいうと、一定の対象期間における業績又は仕事の評価です。  
  人さらに、その人が出したアウトプットを評価するということです。 
  どんなに勉強し、知識や能力を持っていたとしても、それを発揮し、成果を出さなければまったく評価されずません。
  つまり、アウトプットも大切な要素です!(ただし、全く、アウトプットにこだわると行き過ぎた成果主義のようになるので、事情によっては、プロセスも評価の対象にすべきとは考えます。)

3.賃金カットは、まず賞与から
   賃金と賞与では性質は全く異なります。
   賞与は具体的な支給額や支給率が、就業規則等で明記確定していない場合、経営者が支給額を決定するまでは、労働者に賞与請求権は認められず支給の増減について、経営者の裁量があります。
   ですから、まずは「賞与をカットする」ことを検討し、それでも不十分な場合は月例賃金のカットをします。

4.賞与が普通通りであれば、能力不足での解雇は困難
    "能力不足による給与カット"を行いたいとき。
   今の仕事ぶりがパッとしない個々の従業員の賃金を見直す場合、就業規則上の根拠、評価の基準の周知が必要であり、就業規則に基づかない賃金の減額は、労働者の自由な意思に基づいたと認めるに足る合理的な理由が客観的に存在することを要するとされます。

   これに対し、賞与の支給額の決定は、経営者の裁量によるものであり、カットをするなら、まず、賞与からカットすべきです。

   にもかかわらず、賞与のカットをしていない人を、「能力不足で解雇する」という理屈は合理性がないということになります

給与から親睦会費や互助会費などを天引きする時の手続き   [ 2012.11.23 ]

   給与から、親睦会費・互助会費・寮費や食費・財形貯蓄金などを天引きすることがありますが、その場合どのような書類が必要なのでしょうか。

【賃金控除協定】
   労基法には「賃金の全額払いの原則」が定められています(労基法第24条)。
   つまり、給与から勝手に諸費用などを天引きすることはできません。
   ただし、以下の場合は賃金からの天引きが認められています。

<1.法律によって控除すべきもの>
   例:社会保険料、雇用保険料、所得税など
   これは、特段の手続きの必要なく当然に天引きすることができます。

<2.労使協定により控除すると定めたもの>
   法定控除に該当しない冒頭の親睦会費・互助会費・寮費・食費・財形貯蓄金・社員旅行積立金などは、会社と労働者代表との間に「◯◯と△△の金額を毎月の給与から控除します」という協定を結ぶことで天引きが可能となります。

【注意点】
   この協定書については決まった様式はありませんので、任意の様式にて協定締結をしてください。必要な要素は、以下の通りです。

  • 締結日
  • 控除する項目
  • どの賃金から天引きするか(毎月の給与、賞与など)
  • 協定の有効期限

   なお、この協定書は労働基準監督署へ届け出る必要はありませんので、会社で保管しておいてください。以上、給与から親睦会費や互助会費などを天引きする時の手続きについてでした。

業務上事故の使用者責任について   [ 2012.11.20 ]

1.はじめに
   関越自動車道で4月29日に7人が死亡した高速ツアーバスの事故は、その凄惨さから世間の大きな注目を集めています。

  価格競争に端を発する業界の下請け・孫請け構造、労務管理体制の不備や違法性が次々に明らかになると同時に、今後企業は世間からますます高い企業倫理を求められることになるでしょう。
  ここでは、業務上の事故の使用者責任について取り上げます。

 

2.業務上事故の使用者責任
  
そもそも、この「使用者責任」という耳慣れない言葉は民法上に規定されているものです。

 【民法715条1項】
  
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

    つまり、仕事をしていて第三者に損害を与えた場合には、会社には損害賠償責任があるということになります。
   ただし、次の例外があります。

   使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

   これは、会社が相当の注意をしていたのに起きてしまった事故の場合は、その範囲において会社は賠償責任を負わなくともよい、ということです。言い方を変えれば「会社が相当の注意をしていた」と立証できない限りは、会社の責任はある ということになります。

2.使用者責任の例

    
1)
残業や休日出勤により疲労の蓄積が認められる状態で交通事故を起こした場合、
        その点で企業は責任がある。

     2)発作を伴う病気を持った労働者であると知りながら業務上車の運転をさせ事故を
        起こした場合、使用者責任がある。

     3)労働者が(勝手に)不正な会計処理や公文書偽造により第三者に損害を与えた
        場合、(会社が不正を命令していないとしても)監督責任を果たしていないとなる
        可能性がある。


3.事故を起こした労働者の責任はあるか
  
もちろん事故を起こした本人にも責任があるため、会社がその損害賠償金を支払った場合は本人に請求(「求償」といいます)できます。
   しかし、この求償の場合にも、労働条件や事故防止策について会社の不備がある場合には制限がかかります。
   会社はこのように大きな社会的責任を担っている分、残業等の労働時間管理や内部統制には十分な対策を練る必要があります。

 


  



企業が持つべきソーシャルメディア「防衛策」   [ 2012.11.19 ]

   Facebookやtwitter、ブログなどのソーシャルメディアの急速な普及を受けて、企業は新しい防衛策を求められています。
  ここではソーシャルメディア社会に対するトラブル事例と、企業の防衛策について記述します。


トラブル事例

【CASE 1】
  
2011年8月。京都に本社を置く製薬会社の女性社員が、同僚が睡眠薬を飲み会で他人の酒に混入しているという主旨のつぶやきをtwitterに投稿。
  それを見たネットユーザーが批判し、「炎上」となる。投稿した社員が特定され、個人情報や写真がネットに流出。
   9月5日には、会社が自社サイトに謝罪文を掲載した。
   (日本経済新聞WEBニュースより転載)

【CASE 2】
   
2011年1月、東京都目黒区の高級ホテルのアルバイト従業員が勤務中に、利用客だった有名人カップルに関する情報をtwitterで発信。
   ホテルが謝罪した。
   このアルバイト従業員は、匿名でtwitterに登録していたが、他のネットユーザーによって特定され、同従業員の個人情報や写真がすぐにネットに流出した。
   (日本経済新聞WEBニュースより転載)

 

SNSが企業にもたらすリスクの種類
  
上記2つのケース、その他最近の報道等を踏まえると、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は以下の点で企業運営のリスクとなります。
   1.反社会的言動、過激な個人的信条・思想の発信による企業イメージ損失・
       コンプライアンス違反のリスク
   2.
個人情報・顧客情報等の流出リスク
  
3.企業の取引情報、営業機密・企業秘密の漏えいリスク
  
これらのリスクが現実のものとなることを防ぐため、企業側としては、SNS、インターネットメディア等の使用に関するガイドラインを定め、禁止事項をあらかじめ特定し、従業員に周知させておく必要があります。
   さらには、そのガイドラインを逸脱した場合のペナルティーや損害賠償の可能性についても、就業規則その他社内規程に厳格に定めておくべき でしょう。
   若い社員は特にソーシャルメディアの使用率が高いことが予想されます。4月に新入社員を迎える前に、規程・ガイドラインなどの整備を進められることをお勧めします。

 

「ぶら下がり 社員」について   [ 2012.11.18 ]

   「ぶら下がり社員」の実像を見抜く

   近年話題の「ぶら下がり社員」。
   彼らに成果を上げさせるために、会社はどのような取り組みをすべきでしょうか。

1.はじめに
   「ぶら下がり社員」という俗称をあえて定義するとすれば「組織に反抗的ではないが協調意識が薄く、昇進や自己成長に対する向上心も低い社員」です。
   彼ら(彼女ら)は、著しく成績が低く重大なミスを頻発する『お荷物社員』とは違うことが多く、その分「何を考えているかわからない不気味さ」があって扱いづらいという特徴があります。

 2.ぶら下がろうとする原因は?
   ぶら下がり社員の行動の原因として「3つのあきらめ」が挙げられると言われています。

あきらめの種類

心   情

①自分に対するあきらめ

自分なんてどうせダメだろう

②組織に対するあきらめ

自分が頑張ったって組織は良くならないだろう、目立つだけ損をする

③未来に対するあきらめ

こんな時代に生まれた自分は不幸だ



   『新・ぶら下がり社員』症候群の著者・吉田実氏は、これらの「あきらめ」から過剰に保守的思考になり、チャレンジ精神を持たなくなった結果、「ぶら下がり社員化」すると指摘しています。
   なかでも②の「組織に対する不信」がある反面、実は組織にべったりと依存している(自主退職しようとはしない)点、また③の「将来不安感情」が20~30代の若年層に現れている点が近年の「ぶら下がり社員」の特徴であると言えます。

3.「ぶら下がり社員が悪い」では組織の成長は見込めない
  
会社がこの現象を問題視するならば、「その社員をいつどうやって『排除』するか」より、まず「そのような社員を会社が作っていると仮定した場合、どのように改善するか」を考えるべきです。
   この視点で先の「3つのあきらめ」との対応・対策を考え、例を挙げてみます。

 ①   「自分なんてどうせダメだろう」と思わせるような「叱り方」をしていないか?
      
⇒対策例:過剰な人格批判ともとれる叱り方を自分がしていないか、第三者からフィードバックを
                   受ける。

 ②   「自分の頑張りや意見が通らない、改善策を申し出て目立つと損をする」と思わせる
       ようなフィードバック体制の不備がないか?
  
     ⇒対策例:客観視のできるファシリテーター等を活用し、発言の安全が保障された会議を
                    開催することで、改善案やモチベーションなどを引き出す。

 ③   上司自らが「こんな時代、こんな境遇は不幸・不運だ」という発言をしていないか?
      
⇒対策例:上司や先輩社員の後ろ向きな発言を注視する。

 4.ぶら下がり社員の実像
   もちろん「どうしようもない社員」は一定の確率で現れます。
   しかし、「ぶら下がり社員」という言葉ばかりが先行して、その言葉のイメージに当てはめて社員を見てしまうと、その社員の悪いところばかりが目についてしまいがちです。
   時代や社会などの環境のせいにするぶら下がり社員を他罰的にとらえず、会社が目指す「成果」にもっと目を向けさせる施策を検討していくことが、マネジメント層に求められる姿勢ではないでしょうか。

管理職に残業代を払わない危険性   [ 2012.11.17 ]

1.はじめに
   労働基準法に定められた、いわゆる「管理監督者」にあたる労働者には、残業代を支払う必要はありません。
   この規定を基に「課長職以上には残業代を支払わない」等の運用をしている会社もありますが、そこには労使トラブルのリスクが潜んでいます。
   ここでは、「管理監督者」としての判断基準と、想定されるリスクについて説明します。

2.管理監督者に関する法的根拠
   労働基準法第41条には、以下のように定められています。

   労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
   事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
   (一部省略)

   管理監督者には、「週40時間」「1日8時間」などの制限や、「週1日は休日を与える義務がある」といった労働基準法の規定が適用されません。
   つまり、時間外労働手当や休日労働手当を支払わなくてもよいということです。

3.管理監督者としての判断基準
   行政通達や判例によると、労基法第41条の管理監督者として認められるには以下をすべて満たす必要があります。
【1.重要な職務と権限が与えられていること】
   企業の経営方針や労働条件・採用の決定に関与していて、人事権や労務管理上の指揮命令権を持つなど経営者と一体的な立場にあることが求められます。
   例えば飲食店の店長の場合、アルバイト採用の人事権や店舗の統括等の責任があっても、経営方針や全体の運営に対する関与の度合いは必ずしも大きくなく、「経営者と一体的な立場」としては認められにくいでしょう。

【2.出退勤について管理を受けないこと】
  
管理監督者とは文字通り「従業員を管理監督する立場」なので、①タイムカードを打刻する②欠勤したら給与を控除されるなど出退勤を管理されている場合は、管理監督者として認められにくいでしょう。

【3.管理者としてふさわしい賃金が支払われていること】
  
役職手当などが相当に支給されており、給与総額が下位職の労働者と比べて相当に高くなければ、管理監督者としての待遇とみなされません。
   例えば「チーフ手当10,000円、店長手当20,000円」という程度の差異では、管理監督者としてふさわしい待遇とはみなされないでしょう。

【4.自らが生産ラインに関わらないこと】
  
かつて、マクドナルドの店長が「自分は管理監督者ではない」と残業代の支払いを求めた訴訟がありましたが、その際会社は500万円を超す未払い残業代を支払いました。
   判断の拠り所となったものに「店長自らもハンバーガーを作っていた」ということがあります。
   プレイングマネージャーとして自らも営業生産活動を行っている場合は「経営者と一体的な立場」として認められないという判例です。

4.労使トラブルリスク
   以上を踏まえると、日本の中小企業の管理職で「管理監督者」に該当する人は現在ほとんどいないでしょう。
   中小企業における管理職の多くは現場の第一線で働いており、長時間労働も見受けられることから、管理職の未払い残業代のリスクは大きいと言えます。
   この点で、管理職に対する固定残業代導入などの対策は不可欠です。

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