人事労務情報

個人健康情報を取扱うに当たっての留意事項   [ 2012.12.31 ]

先日の「コンビニエンスストア大手のローソンが健康診断を受けないと賞与減額の制度を導入する」との記事に関して、健康診断と安全配慮義務に着目した記事を掲載しましたが、健康診断と個人情報の取扱い に着目することもできます。本日は、これについてです。

今年の6月11日に厚生労働省の労働基準局長は、各都道府県労働局長に次の通達を出しました。
雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項の改正について

通達の背景
・雇用管理の個人情報のうち健康診断の結果、病歴、その他の健康に関する情報の取扱いについては、個人情報の保護に関する法律制定時において、医療分野における個人情報は特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要があるとされていました。

・これを踏まえて「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」があり、さらにに加えて「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」が定められていました。

・この度、上記の指針についての改正が行われ、平成24年5月14日に「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」が公布され、平成24年7月1日から適用されています。

・この改正を受けて、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」も改正されたものです。

 健康情報の取扱いについて事業者が留意すべき事項(改正後)
ここでは、本人の同意に関する事項の主要なものを説明します。
(1)
労働者から提出された診断書の内容以外の情報について事業者から提出を求められた場合、医療機関は労働者からの同意を得る必要がある
(2)
安衛法に規定に基づく通常の健康診断については、
①事業者が健康診断のために必要な労働者の個人データを医療機関に提供すること
②医療機関が委託元である事業者に対して労働者の健康診断結果を報告(提供)すること
この2つは、本人の同意を得なくても良い
(3)
健康保険組合等は、事業者から労働者の健康情報の提供を求められたときは労働者(被保険者)の同意を得る必要がある
ただし、事業者が健康保険組合等と共同で健康診断を行う場合は、労働者の同意を得る必要はない
(4)
なお、特定健康診査及び特定保健指導の実施に定める項目に含まれないもの(業務歴、視力、聴力、胸部Ⅹ線検査、喀痰検査)については、労働者に対して定期健康診断の結果の情報を医療機関に提出する旨を明示し、同意を得ることが必要となるが、同意については、定期健康診断実施時の受診案内等への記載や健診会場での掲示等黙示のによるものが含まれる。
つまり、実務的には、「会社への診断結果の通知に同意すること」を条件に受診して貰う こととしてください。

その他に、
入社時の誓約書において、「定期健康診断後の再検査、その他、会社の指示による健康診断の結果については、医療機関からの通知をすることに同意し、また、必要に応じ報告します」という内容をもりこみ、包括的に同意を取っておく方法などが実務的には考えられます。

健康診断と安全配慮義務   [ 2012.12.26 ]

 昨日、コンビニエンスストア大手のローソンが健康診断を受けないと賞与減額の制度を導入するとの記事を書きました。この狙いは、「社員の健康維持によって業務の効率アップ」と説明されていますが、個人的には、企業の「安全配慮義務」に関するリスク回避が隠された狙いと思っています。

 まず、事業者に関して、労働安全衛生法に、事業者は使用する従業員に対して、医師による健康診断を実施しなければならないと規定されています。(この事業者の義務違反には、50万円以下の罰金が課せられる)

 次に、労働者に関する健康診断の受診義務について、労働安全衛生法は労働者に対しても、「事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」と規定しています。しかし、事業者の健康診断実施義務と異なり、労働者の健康診断受診義務に対しては罰則は規定されていません

 よって、事業者は健康診断を受けない従業員に対して、業務命令として健康診断を受けるように命じることは問題ありません。しかしながら、嫌がる従業員を無理に引っ張っていって健康診断を受けさせることは現実的ではありません。

  では、健康診断を受けない従業員に対して「何度言っても受診しないので、そのままにしておこう」として、健康診断を受診させないままにしておくことは問題ないのでしょうか。

  事業者には、労働契約上、労働者の生命、身体の安全そして健康に配慮するといった安全配慮義務が課されています。このため、健康診断を受診しない従業員をそのまま放置して、もし潜んでいた病気が原因となり労働災害が発生した場合には、相当の補償を請求される可能性があります

  また、病気が直接的な原因でなくても、高血圧の従業員に対して、高所作業を命じたところ、ふらついて転落した場合など、健康診断を受診させていない(本人が受診しなくても)高血圧の従業員に労働強化を行ったということで安全配慮義務違反に問われる可能性が大きいと考えられています。

  このため事業者のリスク回避には、就業規則において、健康診断の受診義務を規定し、その規定に違反した場合の懲戒規定を必ず記載しておき、口頭で健康診断を受けるように伝えたにもかかわらず、頑なに受診しない従業員に対しては、就業規則に基づく懲戒処分を行い、その記録を残しておく必要があります。
  この懲戒規定がローソンでは、賞与カットになっているわけです。

 

健康診断を受けないと賞与減額・・・ローソン   [ 2012.12.25 ]

昨日(12月24日)、人事労務関係の気になるニュースが3件ありました。

1)コンビニエンスストア大手ローソン
  社員が健康診断を受けなかった場合、社員と直属の上司の賞与(ボーナス)を減額する制度を2013年から導入すると発表
2)銀行大手2行(三菱UFJフィナンシャル、三井住友フィナンシャルグループ):
  グループ内派遣を順次、直接雇用に切り替える。
3)トヨタ自動車
  年金「空白」対策として、退職金新制度を検討

  下の2件は最近の法改正に対応したものですが、中小企業にはあまり関係ないように思われます。一方、ローソンのものは、労務トラブルの未然防止の観点から御参考になるかと思います。

   この件は、社員が健康診断を受けなかった場合、社員と直属の上司の賞与(ボーナス)を減額する制度を2013年から導入するというものです。
  社員の健康維持によって業務の効率を上げるのが目的で、第一歩として、2013年春の健康診断を受けなかった社員に対し、まず3回程度、受診するよう促し、それでも2014年2月までに受診しない社員に対して、2014年夏のボーナスの15%、その上司は10%分を減額する措置を取るとのこと。

  上司のボーナス減額にまで踏み込むことについて「仕事の割り振りなどの管理責任を問う」としています。

  会社が毎年健康診断を行ってくれるなんて本当にありがたいことだと思うのですが、社員さんの中には、「忙しいのに~」みたいな人もいて総務や健康担当の社員さんが追いかけまわしている会社もありますよね。
  会社も大きな費用をかけて、社員の健康診断を実施するのですから社員さん側の、「健康の維持と管理」の意識が低いのであればボーナスカットは「合理性、正当性、妥当性」が認められます

   確かに、「部下のそんなことまで、面倒見てられない・・・」と上司たるもの、言えるはずもないですが、正直に言って、個人的には10%もカットされるのは如何なものかとは思います。ますます、中間管理職は大変になります。

   さて、以下は確認ですが、健康診断は、一般労働者を対象とする「一般健康診断」と、特定の有害業務や深夜に従事する労働者を対象に実施が義務づけられている「特殊健康診断」の2種類があり、「一般健康診断」については賃金支払いの義務はありません。「一般健康診断」の受診は、労使双方にとっての責務であるため、所定労働時間中の場合は労働時間として取扱い、所定労働時間外の場合は労働時間とはみなさないとすることが多いです。

   一方、「特殊健康診断」については、所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、「特殊健康診断」の実施に要する時間は労働時間と解され、時間外に行われた場合は割増賃金の対象となります。

労働災害への対応について   [ 2012.12.20 ]

   私も製造業の研究所に約40年間勤務していましたので、身近で労働災害が発生したことがあります。直属の部下が被災者になったことはありませんが、実験を手伝って頂いた関連会社の方が被災されたのです。
  
   一番、つらい思いをしたのは、若い女性の方に印刷サンプルである用紙をカッターナイフで切り抜く作業をお願いしているときに、手が滑って、指を切創し、何針か縫ったケースです。
   それまで定常的に行っており、怪我もなかったので、油断があり、不注意によるものでしたが、良く調べると世の中には、そのような事故が起こり難い安全な切断時の当て板があることが分かりました。本人の不注意ばかりでなく、与えた道具の不備も原因だったのです。いまでは、その安全な当て板が使われていますが、「なぜ、もっと早く気付かなかったのか」の悔いが残りました。

   その経験から、以後、作業指示の際に本人のミスがあっても安全な道具を適用できないかを検討するようになりました。

   さて、上記のような職場の安全を考える力が落ちているような気がしています。(あくまでも私見です)これには、厳しい経営環境から安全部門への人・物の投資が落ちていることや「安全管理のノウハウ」を蓄積して来た団塊世代の退場が関係するように考えています。

   現在、ある時、突然に労災事故が発生したときに適切な対応ができるのかと懸念しています。特に、緊急対応が要求されますので、災害が起きてから勉強すれば良いものではないからです。

   少なくとも万が一に備えた「災害時の緊急対応」に関してのマニュアル化が必要と思います。

就業規則についてーⅢ   [ 2012.12.16 ]

   就業規則は、会社が一方的に作成するだけでなく、従業員の意見を聴かなければなりません。

【労働者の意見をもらう方法】
   会社は、就業規則の作成と変更について、以下の意見を聴く必要があります。

  • 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合
  • 労働組合がない場合には労働者の過半数代表者

   そのため、過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者の意見書を就業規則に添付して、遅滞なく所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。意見書には法定様式はありませんが、以下の情報を入れましょう。

  • 「意見書」というタイトル
  • 宛先(○○株式会社 代表取締役○○など)
  • 日付
  • 意見の内容
  • 労働者代表者の署名または記名押印

   なお、過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者の意見書は、添付するだけで良いとされています。たとえ内容が反対意見であっても構いません。

【就業規則の周知とは】
   前述のとおり、就業規則は、労働者代表の意見書を添付して管轄労働基準監督署に届出します。さらに、事業場の労働者に周知した後に効力が出ます。

   周知の方法については、以下を参考にしてください。

  • 事務所の棚に備え付ける
  • 就業規則データを会社PCなどに保存し、閲覧可能な状態にしておく
  • 全体の説明会を開催する など

   内容を印刷して全社員に配布する必要はありません。 

【その他、育児・介護休業規程など】
   「育児介護休業法」による育児休業及び介護休業に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項です。従って、育児休業及び介護休業の対象となる労働者の範囲や、取得に必要な手続、休業期間等については、就業規則に記載する必要があります。

   また、就業規則に記載すべき休暇には「育児休暇」や「介護休暇」も含まれるため、絶対的必要記載事項になります。実際には、「育児・介護休業規程」などの別規程を定めて、ここに育児休業などについて記載した上で、就業規則に添付するなどします。

【古い就業規則はいつ変更するか】
   就業規則を十数年前に作成した後変更などをしていない場合、現行法規通りになっていない可能性があります。10年前と比べると労働基準法も大きく改正されていますし、企業の労働条件も変更されていると思われます。変更内容の労働者への説明は当然必要ですが、それに伴い就業規則の変更、所轄労働基準監督署長への届出も忘れずに行う必要があります。

   労働条件が変更された場合、就業規則の該当部分を変更する必要があります
   しかし、中小企業の場合はおろそかにされる場合が多々あります。就業規則の変更は労働基準監督署長に届け出る必要もありますが、これを確実に行っている中小企業は少ないと思います。必要な手続は確実に行い、就業規則と実態を合わせましょう。

【就業規則は会社の自由に変更できるか】
   就業規則は会社が自由に変更できますが、変更が労働者に不利益になる場合、合理的な理由がないとして変更が無効とされた裁判例もありますので注意が必要です。

就業規則についてーⅡ   [ 2012.12.15 ]

   就業規則には、どのような情報を書かなければならないのでしょうか。

 【就業規則に記載する情報の種類】
   就業規則には、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」の2種類を記載します。

   絶対的必要記載事項とは、就業規則に記載が義務づけられている事項、相対的必要記載事項とは、その定めをする場合には記載義務のある事項をいいます。

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<絶対的必要記載事項>
   次の事項は、必ず就業規則に記載しなければなりません。

  1. 始業・終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合の就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切及び支払の時期、昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項

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<相対的必要記載事項>
   次の定めをする場合には、就業規則に記載しなければなりません。従って、定めをしない場合は記載する必要がありません

  1. 退職手当の定めをする場合は、労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの方法および支払の時期に関する事項
  2. 臨時の賃金等・最低賃金額の定めをする場合は、これらに関する事項
  3. 労働者に食事、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、これに関する事項
  4. 安全・衛生に関する定めをする場合は、これに関する事項
  5. 職業訓練に関する定めをする場合は、これに関する事項
  6. 災害補償・業務外の傷病扶助に関する定めをする場合は、これに関する事項
  7. 表彰・制裁の定めをする場合は、種類及び程度に関する事項
  8. 当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合は、これに関する事項

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   退職に関する事項(退職年齢など)は絶対的必要記載事項ですが、退職手当(退職金)に関する事項は、その定めがある場合は記載しなければならない相対的必要記載事項です。
   従って、退職手当を支給しない場合は、記載する必要はありません。
   相対的必要記載事項は、その定めをしない場合は記載する必要はないのです

【労働条件の明示義務との違い】
   これらの「絶対的必要記載事項」「絶対的必要記載事項」の多くは、雇用契約書などの必要記載事項と一致していますが、例外があります。
   下記については、個別の労働契約の際には別途定めなければなりません

  • 労働契約期間
  • 就業場所(転勤の有無)
  • 仕事の内容

就業規則についてーⅠ   [ 2012.12.13 ]

   就業規則は、どのような会社が作成しなければならないのでしょうか。


【就業規則の作成の基準】
   就業規則は、すべての事業場で作成を義務づけられているものではありません。
   常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。
   就業規則を変更したときも同じです。

   つまり、常時10人未満の会社は就業規則の作成・届出をする必要はないのです。


【常時10人未満の場合でも就業規則を作ったほうがいい場合】

  10人未満であっても、例えば以下のような場合は、会社のルールを明確にするため事前に就業規則を作った方がよいでしょう。

  • 労働時間が総じて長く、残業に対するトラブルリスクがある場合
  • 有給休暇や休職について労働者から質問されるなど、ルールの明確化が必要な場合
  • 企業秘密情報の管理ルールを定める必要がある場合 など


【トラブル対策としての就業規則】
   就業規則を作成する時、具体的に以下のようなリスク対策ポイントがあります。

[ポイント1]労働時間が長い・休日が少ないなど、残業代トラブル
   定額残業制度を新たに導入したり、変形労働時間制の導入したりすることで、残業代を巡ってトラブルになった時に予想外の金銭リスクがないように対策します。

[ポイント2]休暇や休職など
   年次有給休暇の取得に際して、「会社に事前〇日前までに書面で申請する」などのルールを明確にしたり、「休職」「休職からの復帰」の基準を明確にすることで対策します。

[ポイント3]企業秘密情報や競業避止など
   会社の重要な情報(顧客の個人情報や技術ノウハウなど)を管理する基準を明確にし、「規定に違反した者を懲戒する」などを定めて情報漏洩などのトラブルを抑止します。

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