人事労務情報

職制の部下に対する権限について(11)   [ 2013.04.29 ]

11.企業秘密漏洩防止権限

職制の11番目の権限は、企業機密の漏洩禁止義務です。

これは、雇用関係上の重要な従業員の義務の一つです
例えば、顧客情報などが無断で外部に持ち出された場合、企業にとって顧客の信頼を失うなど大きな損失です。
業務上知り得た企業や顧客等の秘密を漏洩してはならないという守秘義務は特に重要で、企業の対外的信用と顧客に対する安心感を与え、業務に大きなプラスとなりますが、反対に、それが守れないと業績にとってマイナスとなります。

判例上もこの業務上の守秘義務について、「労働者は労働契約にもとづく附随的義務として、信義則上、使用者の利益をことさらに害するような行為を避けるべき責務を負うが、その一つとして使用者の業務上の秘密を漏らさないとの義務を負うものと解せられる。管理職でないからといってこの義務を免れることはなく、又自己の担当する職務外の事項であっても、これを秘密と知りながら洩らすことも許されない」として、場合によっては、懲戒解雇も有効されています。

また、退職後についても元従業員の機密漏洩行為を不法行為としています

業務上の秘密は、多くの分野にわたり、一般に企業が企業の内外を問わず秘密にしておく必要があると判断するものであり、それが客観的に相当であると承認されたものをいいます

この義務の遵守は企業にとって重大なものですから、管理者はこの点について部下管理上、常に配慮すべきことといえます

職制の部下に対する権限について(10)   [ 2013.04.22 ]

10.兼業禁止の注意

職制の10番目の権限は、兼業禁止の注意です。

従業員は企業に雇用されると義務の一つとして、会社に雇用されながら会社の業務以外の業務に従事することは原則として禁止され、従事する場合には使用者の承認を得なければならないといういわゆる「兼業禁止義務」が発生します。

その理由の第一は、時間外や休日に他で労働することにより精神的・肉体的疲労の回復を妨げることです
適度な休養は労務提供の基礎的条件をなしています。
 
判例上も支持されており、兼業禁止が懲戒処分の前提として定められています。

第二は、企業の経営秩序と対外的信用、労使間の信義則上の理由です。
兼業の内容によっては、(例えば、不健全な接客など)企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もあり得るので、会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当といいがたいとされています。

しかし、他方で、いわゆる職業選択の自由が認められているので、本来であれば、勤務時間外に何をするのかは、従業員の自由に委ねられているはずです。
そのため、形式的に兼業禁止規定に反する行為が行われたからといって、そのことが直ちに兼業禁止規定に違反しているということにはならないものと考えられています。

このような状況から就業規則では、許可申請を義務づける方が妥当と考えます。

もう一つ忘れがちなのは、兼業の場合、労働時間も通算されるということです。

時間外割増賃金の支払については、必ずしも1日の勤務時間帯が後ろにある事業主が支払い義務を負うとは限らず、行政通達において「法定時間外に使用した事業主は法第37条に基づき、割増賃金を支払わなければならない」(昭和23年10月14日 基収2117号)とされています。

これを考慮して、兼業を許可する必要があります。

職制の部下に対する権限について(9)   [ 2013.04.20 ]

9.業務促進権限

職制の9番目の権限は、業務促進権限です。

従業員となった者は、自分の担当する業務に促進意欲をもって勤務する義務があります。
そして、上司等はそれにつき指導、指示して担当業務の促進を図る権限と責務を有しています。

企業は、従業員の業務促進意欲をもった活動によって、はじめて生きた企業活動をなし得るのです。

解雇が難しくなった現状においても次のような場合は「解雇は正当」と認められます。

例1
経験者として中途採用した社員が、経験者とすれば達成可能な数字であったのに、社員の実績はこれを大きく下回るものであったうえ、上司の注意指導にもかかわらず社員は営業成績を向上させようとする意欲がなかった場合

例2
勤務成績または能率が著しく不良で就業に適しないと認められた場合

例3
営業社員でありながら約1年間まったく売上がなく、
しかもその間、無断欠勤したり、出勤しても外出先の報告をせずに外出して、そのまま帰宅してしまうことが多く、
かつ、営業の基本となる記名カードもほとんど取得せず、原告が果たして営業活動をしているのかどうかも不明瞭な状態が続いて
原告は上司である支店長に反抗的な態度を取り続け、勤務態度改善の意欲も認められなかった

この業務促進義務は雇用契約上の当然の義務ではありますが、重要なもので、上司等管理職が常に注意しなければならないものです。

会社と社員が信頼し合えない理由   [ 2013.04.18 ]

会社と社員の間に不信感が蔓延している場合、社員をコスト視する会社の姿勢に原因があるのかもしれません。

はじめに
「社員は無責任で信用できない」「会社はいざという時に信用できない」などの不信感が蔓延している場合、社員をコスト視する会社の姿勢に原因があるかもしれません。

 企業が業績を上げていく上で、社員の労働生産性の向上は欠かせません。
そして、社員の生産性を高めるために企業は賃金や労働条件の改善・福利厚生の充実・社員研修などを行い、社員のやる気を引き出そうとします。 

そのような試みにもかかわらず労使間に信頼関係が築けないとすれば、原因はどこにあるのでしょうか。
ここでは「社員をコストとして扱う行動」に着目し、その類型整理と、行動を改善した場合の効果について解説します。


会計処理上 人件費はコストに見える

人件費・および法定福利費(社会保険料など)・その他福利厚生費などは、いずれも会計処理上「販売費及び一般管理費」に計上されます。
一般的には、販管費と呼ばれています。

 企業の目的を「利益の最大化」と捉えるならば、、人件費はコストに見えます。
つまり、「利益を出すためには人件費や福利費などは低いほどよい」という考え方になります。

人件費をコストだと考える企業の行動
人件費をコストだと考えた場合、企業は増加リスクを防ぐために下記のような様々な対策をします。

① 契約社員やアルバイトの比率を高め、人員調整ができるようにする

② 社会保険料を低く抑えるために時間調整その他対策をする、または社会保険に加入しない

③ 健康診断を受けさせない、育児休業を取らせないように誘導するなど、従業員の福利厚生費
    削減を試みる

④ 給与を歩合にし売上低下時の人件費率上昇を抑える

法律違反はもちろん許されませんが、経済合理性だけを考えると、上記のような企業の行動は肯定されます。

見落としがちな問題
前項の企業行動を社員側から見た場合、社員はどのように思うでしょうか。次のように思うかもしれません。

① いざという時すぐに辞めさせる事ができるように、契約社員やアルバイトにしている

② 社会保険料を節約するために調整をしている

③ 健康診断費用がもったいないから受けさせない

会社が社員を疑った上で行動すると、「その反応として社員が会社を疑う」という関係悪化コストの恐れがあります。
社外の研修などで社員のモチベーションをあげようと努力する一方で、「社員をコスト視する行動」がモチベーション低下をもたらしている可能性も考えるべきでしょう。

全員正社員、社保完備、給与は単純に年功序列。
社員をコストとして考えず長く付き合う仲間と考え、まず会社側から社員を信頼する姿勢を見せる。
そのような「先に信頼する」マネジメント姿勢が、労使関係改善のヒントになるかもしれません。 

雇用規制の緩和は実現されるのか   [ 2013.04.16 ]

自民党公約の「解雇規制の緩和」による「解雇をしやすい社会の実現」は、我々にどのような影響を与えるのでしょうか。

はじめに
2012年の政権交代を機に、自民党はマニフェストの中で初めて「解雇規制の緩和」について言及しました。
諸外国と比べて「労働者を解雇しにくい」日本の法体制を改めることが経済の立て直しに繋がるとの論調ですが、利害対立する労働者側団体等の反対もあり議論を呼んでいます。

ここでは「解雇」に対する現行ルールと規制緩和の内容について解説し、同時に解雇取扱いの変化が会社にどのような影響を与えるのかを考察します。

解雇に関する現行の法律ルール
社員の解雇については、労働基準法で以下のように定められています。

(1) 【労働契約法第16条】解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると
         認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする。

(2) 【判例により確立された法理】整理解雇(リストラ)については以下4つの要件が会社に
        求められる。
        
① 人員整理の(とくに経済的)必要性

         ② 解雇回避の努力義務

         ③ 選定の合理性

         ④ 説明責任・手続き妥当性

上記(1)のように解雇についての法律ルールは曖昧で、明確な線引きありません。さらに、日本では「終身雇用」の風潮があります。

結果として(2)のように会社側が解雇を回避するために「経営削減や役員報酬カット」「他の職種への転換を検討する」「公平に対象者を選ぶ」「しっかり説明する」など、相当の経営努力をしなければ解雇は許されない という流れが出来上がりました。

規制緩和の方向性
現行の法律ルールについては、下記のような問題点が指摘されています。

 解雇のハードルが企業にとって高すぎるため、雇用の受け皿である企業の成長の邪魔をしている

l正社員の解雇をしにくいのであれば、企業は人員調整しやすい派遣社員や契約社員の雇入れをするようになり、結果として雇用安定につながらない

そのため、「もう少し解雇をしやすくして、労働者が企業から企業へ移りやすくしたらどうか(雇用の流動化)」という主張に繋がっているようです。

現段階では具体的な緩和方法は決まっていませんが、「経営が困窮していなくても、ある程度必要があれば解雇できる」、「金銭的解決を認める」などの方向性が予想されます。

 
雇用の流動化が企業に与える影響

までよりも解雇がしやすい環境が実現した場合でも、本当に「雇用の流動化」に繋がるかは不明です。仮に「雇用の流動化」が進んだ場合、企業には以下のような変化が予想できます

(1) 経済的に非効率な部門や人材にかけていた人件費が圧縮される

(2) 企業への帰属意識が低下し、結果として優秀な人材を会社にとどめておくための人件費が
      増加する

「役に立たない社員はいらない」という会社の意思表示がしやすくなる一方で、「魅力のない会社に長く留まる理由はない」という労働者も増えるのではないでしょうか

今は、上記の(1)が注目されているようですが、本当は企業にとっても厳しいものであると思っています。

 

契約社員の期間満了が、なぜか解雇扱いに!   [ 2013.04.14 ]

有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了しますが、次の場合は
契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」厚生労働省告示

3回以上契約が更新されている場合
1年を超えて継続勤務している人についての場合

なお、更新が何回も繰り返し行われるなど、事実上、期間の定めのない契約と変わらないといえる場合には、契約期間が満了し、契約が更新されない雇止めは、解雇と同様の扱いとなります。

短期の有期雇用契約を繰り返し、トータルでその期間が3年を超えると「期間の定めのない契約」とみなされます。
従って3年を超えて雇止めを行うと解雇と見做されますのでご注意下さい。

『契約期間満了』が「解雇権濫用」とすり替わる??
契約期間に定めがある場合、期間が満了すれば雇用契約は終了であり、終了にあたり理由は不要と理解されがちです。
ところが、労働契約法や雇用保険法上では、有期雇用契約について、期間満了で更新しないとした場合(これを雇止めと言います)雇止めが解雇権の濫用とみなされることがあります。

会社側のトラブル回避に着目した雇用契約書を作成する
① 労働条件通知書や雇用契約書を締結し、その書面において
「更新の有無」「更新の判断基準」を
    できるだけ具体的に明記しましょう。
② 厳格な更新手続をとりましょう。
③ 雇用契約期間の途中時点で、実質的に更新の有無を検討し、面談をして本人の意思、会社の
    評価等を確認しましょう。
④ 正社員と区別された、募集、採用手続、教育研修、担当業務、就業規則その他処遇、異なる労働
    時間を定めましょう。
⑤ 採用時に雇用継続の期待を持たせるような言動を控えましょう。
⑥ 有期雇用契約であって、1年を超えて継続勤務している者を今後の更新しないこととしようとする
    場合、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告が必要です。
⑦ あらかじめ当該契約を更新しない旨を明示する方法

【例】
有期契約更新を繰り返す場合であっても、本雇用契約は、最初の雇用契約開始から3年を
超えることはない契約である

職制の部下に対する権限について(8)   [ 2013.04.10 ]

8.誠実職務遂行権限

職制の8番目の権限は、誠実職務遂行権限です。

労働契約を結び従業員になると、企業の一員として企業に対し、誠実かつ忠実に勤務すべきい、わゆる誠実義務が発生します。

企業の内外を問わず、広く使用者の利益を不当に侵害してはならないとともに、侵害のおそれのある行為も慎み、企業の発展のために尽力するという義務です。


*事実を誇張歪曲して企業を中傷誹諾するビラを作成し、配布したことにつき、会社が制裁を課することは合理的理由があるものとされた。
これをもって従業員の言論その他表現の自由を不当に制限するものとはいい得ない。

*最近の例では、勤務時間中の私用メールも送信者が文を考え作成する時間は職務専念義務に違反するし、会社の施設を私用で使用する企業秩序違反行為とされることもあります。

このように従業員の職務に専念すべき義務の励行も職制としての管理者の義務です。

職制の部下に対する権限について(7)   [ 2013.04.08 ]

7.信用保持権限

職制の7番目の権限は、信用保持権限です。

労働者は会社と労働契約を結びその従業員になると、雇用主である会社と従業員との間では信義則に従う義務が発生します。

この従業員の義務には、対内的な信頼関係の維持義務対外的な企業の名誉、信用保持義務とがあります。

対内的な例:
*重要な経歴を詐称することは「人物としての信頼性」に欠けるものとして懲戒解雇が有効とされた例があります。

*仮伝票制度を悪用して見せかけの預金量の増加をはかった幹部職員について「各種の経営判断を誤らせるおそれが大きく、金融機関としての信用を失墜させる行為」で懲戒解雇有効とされました。

対外的な例:
*労働者が私生活上の非行が原因で刑事罰を受け、それが企業の社会的評価に重大な悪影響を及ぼす場合

管理者は、部下のこれらの対内的・対外的な信用の保持についても、職責上その権限と責務を持っているのです。

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